|
―― |
まずは、『黙秘』ですが、これは思い入れがあるようですね。
|
|
蛭子 |
『黙秘』は、テレビ朝日『虎の門』の「ビデオでも見ましょうか?」のコーナー※1 で見たんですよ。そこで、俺が初めて五つ星つけたビデオなのに、まだ放送されていないみたいだなぁ。初めて五つ星つけた映画だったのに…。 |
|
―― |
『虎の門』と言えば、過去の放送で、『鬼が来た!』の後半部分に、
五つ星をつけてましたね。 |
|
蛭子 |
そうなんですよ。『鬼が来た!』は、前半後半で、ガラッと変わりましたよね。前半は、変にテンションが高くて、ついていけなかったんですよ。そしたら後半、すごく恐ろしいストーリー展開になって…。だから平均すると三つ星ですね(笑)。おもしろかったですけど、日本人が観たらちょっと引くかもしれませんね。 |
|
―― |
で、肝心の『黙秘』なんですが(笑)。 |
|
蛭子 |
えっと…これどういう映画だったっけ? 忘れちゃった(笑)。 キャシー・ベイツがね、最初、悪い風に描かれているんですけど、だんだん良い人になっていくんですよ。で、ちょっと涙が出るんですけど…。あれ? ストーリーまったく忘れちゃったよ〜(笑)。 |
|
―― |
では、印象に残っているシーンは? |
|
蛭子 |
う〜ん…とにかく、キャシー・ベイツが悪い女なんですけども…。 |
|
マネージャー氏 娘のお父さんを殺したんですよね…。
(と、マネージャー氏による解説がしばし続く) |
|
蛭子 |
よく覚えてるね。もっと言って! 最後どうなったっけ? |
|
マネージャー氏 船の上か何かで全てが解決したと思いますけど…。 |
|
蛭子 |
…観るしかないですね(笑)。
とにかくね。チャラチャラしてないストーリーで、ドキドキさせながらも、ちゃんとリアルに描いてたから素晴らしいんですよ。
…じゃあ『黙秘』はこれぐらいで(笑)。黙秘っていうぐらいだから、黙って観るべき(笑)。 |
|
―― |
続いての『昼顔』は、主演のカトリーヌ・ドヌーブが良いと?
|
|
蛭子 |
カトリーヌ・ドヌーブが、昼は貴婦人みたいな生活をしてて、夜は娼婦になるというのがショッキングでね〜。 |
|
―― |
いや、昼に娼婦になるんですよ。 |
|
蛭子 |
えっ? そうだったっけ? 昼に娼婦になるんだっけ? だから『昼顔』か? ゴメン(笑)。
これ観たの35年ぐらい前だから、あんまり覚えてないんだよ(笑)。
なんか妄想の中のエロスとか、芸術っぽい映画でしょ。だからこういうのもチョっと今回選んでみました(笑)。 |
|
―― |
当時は何をされてたんですか? |
|
蛭子 |
長崎で看板屋に勤めてたんです。
この頃、芸術映画をよく観てたんですよ。 ルイス・ブニュエルとかゴダールとか。その中のひとつですね。あと、この時期、ロマン・ポランスキーの『反撥』も観たんですけど、これも、カトリーヌ・ドヌーブのデビュー作でいいんですよ。 |
|
―― |
映画は若い頃からお好きだったんですか? |
|
蛭子 |
そうね。ゴジラとか裕次郎シリーズとか…、でもいちばん好きなのはサスペンス映画かな。『見知らぬ乗客』のヒッチコックとか。
|
|
―― |
芸術映画をたくさん観られていて、それが漫画に影響してることはあります? |
|
蛭子 |
それは充分あると思います。映画の世界では、芸術映画ってたくさんありましたけど、漫画の世界では、そんなことありえないって思ってたんですよ。漫画は、普通のストーリーで進んでいくものだって。
でも、つげ義春さんの『ねじ式』※2 っていうのを読んで、ビックリしたんですよ。漫画でもこんな芸術っぽいものが出来るんだ、受け入れられるんだって。強い影響を受けましたね。 |